遺言・相続対策の流れ

1.「どのような相続にしたいのか 」ご自分で考えてみる

まずは、民法等の規制に関係なく、自分の思い通りの相続、財産承継を思い描いて下さい。
「自分の思った通りの相続を行う」。これが、究極の相続です。
「誰に幾らの財産を継承するのか」を、自分の思い通りに描いて下さい。
もし、これが法律的にも問題ないのであれば、これを遺言に落として完了です。
本来相続は、自由なものです。「遺言のない場合に限って法定相続が実施される」のだということを忘れないで下さい。

ただ、ここで心配事が出てくるかと思います。
例えば、「資産が多すぎどう見ても相続税を支払いそう」
「どうしても特定の人に多くの財産を渡したいのだが、認知症になった場合はどうしたらよいのか心配」等…。

大丈夫です。このような心配事は出てきて当然です。
この心配事を誰にも相談せずに(出来ずに)、何らの手も打たないまま相続になってしまった場合に「争族」が発生してしまうのです。
心配ごとがあれば、未解決のままで結構です。その問題点を抱えたまま当事務所にご相談下さい。
解決方法を一緒に考えていきましょう。

2.問題点の解決を専門家(私達)と一緒に考える

①.問題点の整理
まず、お客様の考えられた相続案で問題がないかをご確認します。
当所長は、行政書士に加え、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP・ファイナンシャルプランナー技能士1級)の資格を持っております。
遺言・相続・後見人に関する法務のみならず、介護・遺族年金や財務(保険・税金)の相談も全て解決可能です。
更に、宅建士の有資格者ですので、不動産関係のご相談も大歓迎です。
ここで、問題点を見つけ、解決すべき課題を明らかにします。
(ここまでは原則、無料で対応致します)

②.問題点の解決策の検討

●誤解(思い込み)の排除
問題点の解決策を考える前提として、「円満な我が家には遺言は必要ない」、「遺産を残すほどの財産はない」といった誤解を解くことが大切です。
「今、家庭が円満なのは、あなたが家族をまとめているからです。あなたが存在しない家庭を想像してみて下さい。

多くの方が、「確かに、自分がいなくなった場合には…」と考え直します。
また、相続問題が発生した場合の財産額を見ると、約30%は財産額1千円以下の案件であり、約75%が財産額5千万円以下の案件です。
いわゆる「億万長者」でなくとも、相続で揉めることが分かります。

●相続人・相続財産の検証
相続人・相続財産はご自分で調べることは可能です。
ただ、戸籍を辿って間違いなく全ての相続人を把握すること、不動産等の評価を全てご自分でやられるのは難しそう、という方が大半です。
ここは我々専門家にお任せ下さい。

次に、一番頭を悩ませる「誰に、幾らの財産を、どのように与えるか」ということです。
そして、ここでの一番のネックは「遺留分」という制度です。
現行民法では、基本的に相続規程は任意規程です。但し、この遺留分については強行規程(「絶対的なルール」とお考え下さい)であることにご注意下さい。
従って、遺留分を尊重した遺言を作成することがベターです…が、実際上は「遺留分の侵害」を前提とした遺言が大半です。
「誰かに大半の資産を相続させたい、と考えるからこそ遺言を作成する」というのが本音だと思います。
従ってこれに対しては「遺留分は、遺留分請求者からの減殺請求があった時に初めて問題になる」という考え方をベースに対処される方も多くいらっしゃいます。これはこれで一つの考え方です。

●遺言・後見人・家族信託の選択

次が一番の考えどころです。
相続の絵が描け、特段の問題点がなければ、遺言書を作成します。
ここでは必ず「公正証書遺言」にすることをお勧めします。
自筆証書遺言にした場合は、遺書が発見されないリスク、筆跡鑑定のリスク、作成意思の問題等で、結局相続人の方々に苦労をかけることなります。
資産の移動が相続時で問題なければ良いのですが、資産額が多い場合等には、生前贈与がベターのケースもあります。
このあたりはファイナンシャルプランナーの所長にお任せ下さい。複雑なケースでは、税理士と連携を取って対処しております。

ご家族の方が相談に見えるケースでは、後見人の選定が考えられる場合もあります。
このような場合には行政書士会が設立している後見人センターに紹介することも可能です。
また、直ちに後見人を選任する必要までは至っていないケースには、任意後見制度を活用されることをお勧めしております。

更に、最近は「遺言」・「後見人」・「相続」・「相続後」について一括し対処できる制度として、「家族信託」が注目されています。
この制度は非常に有効な制度でありますが、比較的新しい制度であり、必ずしも皆様に馴染みのある制度ではありません。
若干理解の難しい部分もありますので、必ず専門家のアドバイスを受けて実施して下さい。
当所長は「家族信託普及協会」の正会員ですので、安心してご相談下さい。

3.「遺言の作成」・「遺産分割協議書」の作成

①.遺言書の作成
遺言の作成は、上記【2】でのご説明の通り、必ず「公正証書遺言」で作成しましょう。
公正証書遺言は、事前にお客様と打ち合わせをした通りの内容で、当事務所で公証人と文面のすり合わせを行います。
その文面で問題なければ公正証書遺言の準備は完了です。
この段階で公証人への手数料も決定しています。
従って、公正証書遺言を作成することを決めたならば、その後にお客様がやられることは、公証人役場までいかれ、公証人の音読を聞いて捺印するのみです。
尚、被相続人となる方が公正証書遺言を作成しているかどうか分からない場合には、公証役場にて「遺言検索システム」を利用して遺言書の有無を確認できます。

②.遺産分割協議書の作成
一方、相続の手続きは、「遺言書」があれば「遺言執行」で、「遺言書」がなければ「遺産分割協議」で進めることが基本です。
ただ、ご注意頂きたいのは、相続人全員が遺言の存在を知り、その内容を理解した上で、遺言の内容と異なる協議を行えば、その協議の有効性は問題ない、ということです。
この点は誤解されやすい点ですので、くれぐれもご注意下さい。

遺産分割協議を始めるに当たっても、まずやるべきことは、遺言の時と同じです。相続人の調査と相続財産の調査です。
ここで注意をすることは、遺産分割協議を長期化する相続人がいた場合の対処です。認知症の方等は、成年後見人制度を利用する必要があります。
未成年者の場合には親権者が代理をしますが、その親権者も相続人であった場合には特別代理人を選任する必要があります。

更に、行方不明者の場合には、不在者財産管理人の選任が必要となります。このような方がいらっしゃる場合には長期化するケースが多いですから、早め早めの対応が望まれます。
また、実務上よくある問題点は、「金融機関の口座が凍結されてしまう」ということです。
これに対しては、極力金融機関への書類提出を急ぎ、金融機関の早期対応を依頼すると共に、事前に対策が打てる場合にはできるだけの準備が必要です 。

一方、今般の民法改正で、金融機関からの預金の払い出しが若干緩やかになっています。内容をご確認下さい。
もちろん、当事務所にご照会頂ければご説明します。

4.「遺言執行」・「遺産分割」の実行

①.遺言執行
遺言を書くケースでは、遺言の中で「遺言執行者」を指定することが普通で、行政書士・司法書士等の専門家を指定するケースが多いようです。
この場合には、基本的にこの遺言執行者からの報告を注視しておく必要があります。
ただ、中には相続人の誰かが遺言執行者として指定されるケースもあります。この場合には、ご本人と他の相続人との調整を取ることはなかなか難しいものです。
専門家のアドバイスも参考にされることが必要と思います。尚、この場合には、やはり金融機関の手続きで苦労されることがあると思います。
特に、金融機関への遺言執行者からの払戻請求は、「遺言執行者の権限」であり、「遺言執行者の署名・押印」で可能なことを金融機関に対してご説明頂ければと思います。

②.遺産分割の実行
遺産分割の実行については、遺産分割協議書作成時に打ち合わせ・問題点の解決は出来ていますので、後はこれを実行するのみです。
ただ、遺産分割協議の際、十分な調査、話し合いが行われていない場合には、この段階で難航するケースもあります。
例えば、認知事項・養子縁組事項に関しての調査が不完全なケースが考えられます。
認知事項は、父の戸籍の身分事項覧に当初の1回のみ記載されます。
その後に戸籍が変動した場合は移記されないこと、養親側の戸籍の縁組事項は当初の1回のみ記載されるが、その後に戸籍の変動があった場合には移記されないこと、にはご注意下さい。

また、遺産分割を「代償分割」で行う場合、代償金の支払いは遺産分割協議の成立時に行うべきです。そうでないと、代償金を受ける側は代償金未払いのリスクを負うこととなります。

一方、遺産分割を「共有」とした場合、各共有者は他の共有者の同意がなければ共有物に変化を加えることは出来ません。
加えて、共有者に相続が発生した場合には、共有者がどんどん増えて行くことになります。

「代償分割」と「共有」の場合にはリスクがあることをご注意下さい。